ナトリウム硫黄電池(NaS電池)とは

NaS電池とは
ナトリウム硫黄電池(NaS電池)とは、負極のナトリウム(Na)と、正極の硫黄(S)と、をナトリウムイオン電導性の固体電解質の隔壁で隔てた二次電池です。ナトリウムは負極活物質であり、硫黄は正極活物質です。ナトリウム硫黄電池(NaS電池)は、ナトリウムと硫黄を溶融状態に保つため、300℃程度の高温で使用します。

(電極反応)
ナトリウム硫黄電池(NaS電池)は、以下の反応で充放電します。

(放電反応)


ナトリウム硫黄電池(NaS電池)は、放電時には、負極側のナトリウム(Na)がナトリウムイオン(Na)と電子(e)に分かれ、ナトリウムイオンは隔壁を通って正極側に、電子は外部回路を通って硫黄側にそれぞれ移動します。そして、ナトリウムイオン(Na),電子(e)と硫黄(S)が反応して多硫化ナトリウム(Na)を生成します。
負極: Na → Na
正極: xS + 2Na + 2eNa
全体: 2Na + xS → Na

(充電反応)


充電時には、正極側の多硫化ナトリウムがナトリウムイオン(Na)、電子(e)、硫黄(S)に分かれ、ナトリウムイオンは隔壁を通って、電子は外部回路を通ってそれぞれ負極側に移動します。そして、ナトリウムイオン(Na)と電子(e)とが反応してナトリウム(Na)を生成します。

正極: Na → xS + 2Na + 2e
負極: Na + e → Na
全体: Na → 2Na + xS

(固体電解質隔壁)

ナトリウム硫黄電池(NaS電池)の隔壁は、ナトリウムイオン電導性があるβ-アルミナが使用されています。β-アルミナは、NaO-xAl(x=9~11)の組成で知られるセラミックスです。β-アルミナは、酸化アルミニウム(Al,α-アルミナ,γ-アルミナ)とは異なります。
β-アルミナは、アルミナ層(Al層)の間にナトリウムイオンが存在する結晶構造をもちます。ナトリウムイオンがこのアルミナ層(Al層)の間を移動することでナトリウムイオン電導性を示します。
β-アルミナは、化学組成がNaO-xAl(x=9~11)で表されます。これ以外に、NaO-xAl(x=5~7)で表されるβ”-アルミナが知られています。β”-アルミナは、β-アルミナと比べて結晶構造におけるナトリウムイオン含有量が多く、相対的にナトリウムイオン電導性が高くなっています。しかし、β”-アルミナは、β-アルミナより結晶構造を維持しにくいという問題もあります。

(引用元:米村雅雄(2020)「固体電解質探索と結晶構造解析」日本結晶学会誌,57(2),p.79-84)

NaS電池の特徴
・レアメタルを使用せず、ナトリウムや硫黄等の材料が天然資源から豊富に得られます。
・鉛電池の約3倍の高エネルギー密度を持ちます。
・充放電効率が高く、自己放電がありません。
・充放電サイクル特性が良好で長期耐久性に優れます。

NaS電池の課題

・300℃程度の高温で使用するため、使用温度まで昇温するためのヒータや使用温度を維持するための断熱材が必要になります。
・固体電解質隔壁が破損して陰極室と陽極室とが連通すると、ナトリウムと硫黄とが直接反応(発熱反応)して発火に至る問題があります。
・高温の溶融物が電池容器の外部に流出して発火に至る問題もあります。特に、複数の電池(単セル)を組み合わせて形成したモジュール電池では、一つの電池(セル)で発生した火災が、その電池を含むモジュールだけでなく、隣接するモジュールまで延焼する事故も発生しています。

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